東京のOLがフィンランドでインターンした話

フィンランドの美術学校でインターン後、北欧雑貨のバイヤー、モデル、ライターとして活動/現地の体験やマニアックな情報を公開中

マット洗いに見る”ていねいな暮らし”

2016.7.29.

今日は年に一度のマット洗いの日。毎年夏に親戚総出で行うそうです。

 

大掃除ならまだしも、マットを洗うのに8人も必要?!と少々面食らいつつ、興味はあるので手伝うことにしました。

 

家のキッチンや廊下に敷いてある裂き織りマット、およそ10枚を車に積み込んでポルヴォーの中心街へ出発です。

 

裂き織りマット(trasmatta トラースマッタ)とは、使わなくなった衣類やシーツを裂いて、織り機で編み上げたものです。

1940年代から作られている伝統的なものですが、現在もフィンランドの家庭で広く使われています。

 

marimekkoの有名なテキスタイルrasymatto柄も、この裂き織りマットがモチーフとなっているよ、と友人Aさんが少し前に教えてくれました▼


 

 

マッマの妹の家へ行き、バッバたちと合流してマットの洗い場へ向かいました。

広大な敷地にポツンと洗い場と絞り機と干し場があります。

 

洗い場に一枚のマットを敷いて、蛇口をひねって水を出します。

そこに洗剤を垂らし、ひたすらブラシで磨いては、水ですすぎます。

その箇所を洗い終えたらマットの位置をずらして、一連の工程を繰り返します。

 

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一度に磨くことのできる面積がブラシの大きさでかなり限られるので、1mのマットを洗うのに30分近くかかりました。

 

ちなみに、このマット洗いには松が原料の環境にやさしい洗剤を使うのが定番だとか。

 

洗い場では水しか出ないので、次第に手がかじかんできます。

手が真っ赤になった私を見たバッバは、マット絞り機の使い方を教えてくれました。

 

ここからは、マット絞り機(mattomankeli マットマンケリ)の出番。

すすいだマットをマンケリに固定します。そして取っ手を回すとマットがローラー間に巻き込まれて水分が抜ける仕組みになっています。

 

こうして脱水を経たマットを干して、乾くのを待ちます。

 

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マット洗いに行く前の私は

 

「効率性を重視するフィンランドの人が休日の半日以上をマット洗いに費やすのって矛盾してない?」

 

「家の掃除は業者に毎週お願いしてるし、食器洗いも歯磨きも電動でやるのに、(デリケートな衣類ですらない)マットだけ自分たちの手で洗うなんて謎」

 

と斜に構えていました。

 

しかし、こうして家族や親戚と過ごすひとときや、洗い終えて風になびく色とりどりのマットを眺める達成感は、この夏の風物詩でしか得られないことを知りました。

 

また、マットそのものも洗う過程で少しずつ色落ちして渋い色合いになっていくので、一枚一枚に毎年、お洗濯の思い出が育まれていきます。

すると、これらのマットに愛着が湧いてきてしまうのです。

 

近年の日本のメディア界隈に「(北欧の)ていねいな暮らし」という一部では揶揄されがちな表現がありますが、その真の正体は、日常におけるこのような瞬間を指すのかもしれません。

 

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とはいえ、この夏の風習はフィンランドは大人でも夏休みが一ヶ月間あるから続いているんだろうなとも私は思います。(もちろん業界•職種•各家庭の状況によります)

 

加えて、クリーニング屋さんもコインランドリーも、フィンランドにはほぼないので自分たちで洗わざるを得ない・・・気もしますが。

 

いずれにせよ、手作業を選んだことで生まれたこのささやかな体験は、私にとって忘れられない思い出となったのでした。

 

それでは、もいもーい。